契約の解除・原状回復・支払金の返還等について
- 契約期間中なのですが、都合があって退去したいと考えています、契約書には「契約期間中の解約は、相当の期間をおいて申し出ること」とされています。退去の申し入れはどのくらい前にしなければいけないのでしょうか。
旧建設省が作成した賃貸住宅標準契約書では、解約予告期間について、「少なくとも30日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解除することができる」旨の定めがありますが、一般には解約申入れの期間を1か月程度としていること、賃料については申入れからの期間に合わせた日割り計算にしていることが多いようです。 標準契約書に倣って、大家さんと話してみてはいかがでしょうか。
- 家賃滞納はしていませんが、大家さんから3月中旬の契約満了時に出て行って欲しいといわれました。大家さんの姪が大学入学で田舎から上京し、このアパートだと通学に便利だし、親も安心だそうです。こんな場合は立退料がもらえると聞きました。どのくらいもらえるのでしょうか。家賃は月7万円と周辺に比べ安めで、近くの少し広くて新しい部屋だと月10万円くらいです。
貸主が借家契約についての更新の拒絶または解約の申入れをする場合の借地借家法の考え方は「賃貸人が建物の使用を必要とする事情」と「賃借人が建物の使用を必要とする事情」となります。各事例ごとの程度も正当事由の有無の判断基準の1つですが、本件の貸主の事情だけで正当事由があると認められるとは思えません。立退料の額等の基準はありませんので、引越費用や家賃の差額等について、大家さんと交渉してみてはどうでしょうか。
- アパートが老朽化して取り壊すことになりました。今の家賃は月3万円で、近くの月4万円くらいのアパートに引っ越すつもりなのですが、貸主の都合で契約を解除するのだから立退料をもらえるでしょうか。
借地借家法は、貸主が借家契約についての更新の拒絶または解約の申入れをする場合には、正当事由が必要であると定め、その正当事由の有無は、さまざまな状況を総合考慮して判断されます。いわゆる「立退料」は、正当事由がかけている場合に補完的に考慮されるものです(借地借家法28条)。 「建物の現況(建物の老朽化等)」も判断基準の1つですが、建物の老朽化の程度が著しく、客観的に判断してそのまま賃貸しておくと倒壊等により借主の身体・生命の危険が高いと判定されるような場合は、正当事由が認定されると思われます。財産的給付(立退料)がなくとも、貸主に契約の更新等を拒絶する正当事由があると裁判所が認めた場合は、立退料は支払われないことになります。
- もうじきアパートの契約期限が切れます。私は更新して住み続けたいのですが、大家さんからは立ち退くように言われています。大家さんには別に家があります。これまで7年の間、家賃の支払いが3回くらい遅れたことはありますが、今は特に滞納はありません。引き続き住むことはできますか。
借地借家法によれば、通常の借家契約では、大家さんが更新を拒絶しようとする場合は、正当事由が必要とされ、「賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情」、「賃貸借に関する従前の経過」、「建物の利用状況」など具体的な判断基準が明示されています。詳しい事情はわかりませんが、大家さんには別に家があり、自ら入居しようということではなさそうですので、ひどく老朽化したので建て替えざるを得ないなど、ほかに特段の事情がなければ、正当事由はないと思われます。 また、過去7年間に3回程度の家賃の滞納があっても、現在滞納がなければ、契約の解除事由には当たりませんので、今後もアパートに住み続けることは可能と思われます。
- アパートを借りるため何軒かの不動産業者を訪ねました。 ある店の物件が気に入りましたので、その旨を告げたところ「この物件は人気物件だから急がないと他の借り手がすぐ決まってしまう。 物件を押さえるためには家賃の1か月分を差し入れてくれ」と言われました。そこであまり考えずに言われるとおりにしましたが、後でよく考えると日当たりが悪く広さのわりに案外割高だと感じましたので、次の日に「借りるのは止めたので支払った金銭を返して欲しい」と言いましたら、業者は「既に家主に連絡の上、契約を了解してもらっており契約は成立している。 金銭は手付金であるので返還できない」と言われました。こんなことってあるのでしょうか?
ご質問のケースでは、物件が気に入ったものの、確定的に借りたいと言ったわけではないし、業者自身も手付金ではなく物件を押さえる目的で受け取っていますので、民法でいうところの契約の申し込みがあったと見るのは難しいと思います。 また、家主も相談者の家賃支払い能力や保証人について何も調べていない段階で承諾したと言うのはかなり無理があるのではないでしょうか。ですから契約が成立しているとは考えにくいと思います。 家主としては手付金を収受する権利はありませんし、業者も家主に今回の金銭を渡すべきでなかったと考えられます。 また、仮に業者が主張しているように「賃貸借契約」が成立しているとすると、業者は重要事項の説明をしておらず、また同説明書を交付していないことになり、宅地建物取引業法違反を問われるおそれがあります。 以上のことを念頭において、もう一度業者と話し合って見て下さい。
- 今度1人暮らしを始めようと思い、気に入ったアパートが見つかり来週契約することにしました。詳しい説明は受けていませんが、不動産屋から事前に敷金等を振込むように言われて振込みました。しかし、親が急に入院することになり、不動産屋に契約できないと連絡したら「違約金として家賃の1か月分を差し引きます」と言われました。違約金は払わなければならないものでしょうか。
契約が成立しているかどうかで、返還される金額は変わってきます。重要事項説明も受けて、借主が契約書に押印し、貸主も契約締結を承諾している状況で、敷金等を振込んでいれば、契約は成立していると思われます。その場合には、契約に従い、敷金等の清算が行われます。ご相談の内容ですと、重要事項説明も未実施であり、契約締結前の申込みの段階と考えられます。宅建業法では、宅建業者は取引の相手方が申込みの撤回を行った場合は、受領した預り金を返還しなければならないと規定しています(宅建業法47条の2第3項)ので、今回のように申込みの段階であれば自己都合で撤回しても、違約金は発生しませんし、不動産業者は、預かった敷金等を全額返還する必要があります。
- アパートの賃貸借契約を結び、まず内金として5万円を支払い、そのあと前家賃・敷金・礼金等で25万円、計30万円を貸主に支払いました。設備等で壊れている箇所を入居前に修繕する約束になっていますが、やってくれません。契約を解除するつもりです。支払金30万円は全額返してもらえるのでしょうか。
入居前に賃貸物件の不具合箇所を修繕して引き渡すことを約束して、賃貸借契約を締結したにもかかわらず、貸主が修繕をしないことは、賃貸借契約に基づく責務不履行といえます。したがって、約束した期日までに修繕工事が行われず、借主が入居できず契約の目的を達成することができないのであれば、契約を解除することができ、30万円の返還は当然のこと、それにより損害を被ったのであればその損害についても損害賠償請求することが可能といえます
- 不動産の契約では、売主側から解約する時には買主の入れた手付けを倍返しと聞きます。私は家賃月10万円のマンションを借りるにあたり、5万円を手付けとして支払い賃貸借契約を締結しました。貸主が貸さないことにしたとして5万円返してきました。10万円ではないのでしょうか。
不動産売買においては手付金が授受されて契約が締結されることが一般的ですが、居住用の賃貸借では、手付金が授受されて契約を締結することは少なく、契約の前に物件を押さえておくなどの目的で、「申込金等」が授受されています。 「手付金」と「申込金」とでは、法的性格がまったく異なります。ご質問のように、手付金が授受されて賃貸借契約が締結されたのであれば、借主が「履行に着手」するまでは、貸主は受領した手付金の倍額を支払って契約を解除することができます。手付金が5万円ですから、手付解除するのであれば、貸主は10万円を支払う必要があります。
- 東京23区内のアパートを最近出て、今は他県に住んでいます。敷金は28万円でした。特に汚していないのに、敷金返還額は5万円と原状回復のガイドラインとはかけ離れた内容でした。弁護士に頼らなくても、少額訴訟は可能と聞きましたが、具体的にどこへどう起こせばいいのでしょうか。
少額訴訟は、原則として、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に起こすことになります(敷金返還請求のように、不動産に関する請求の場合にはその不動産の所在地を管轄する簡易裁判所にも訴えることができます)。ご質問のケースでは、「東京簡易裁判所」でよいと思われますが、詳しくは最寄りの簡易裁判所にご確認ください。また、訴訟を起こすには、訴状や申立手数料、郵便切手などが必要ですが、訴状の書式やその記入例などは裁判所のホームページでも入手できますので参考にしてみてはいかがでしょうか。
- 私は賃料5万円、敷金5万円、礼金5万円で、アパートを借りていましたが、ミュージシャンなので、音がうるさいと周りからよく苦情をいわれました。媒介(仲介)業者を通じて、大家さんから、20万円の立ち退き料を支払うから出て行ってくれといわれたので、出て行くことにしました。管理業者は、媒介業者の子会社ですが、退去時に検査して、原状回復費用に30万円かかるといわれました。確かに床や壁など、音楽の練習をしている際に、少し壊したところがあります。でも、大家さんの頼みで出て行くのだから、原状回復費用は大家さん持ちだと思うのですが、どうでしょうか?
大家さんの頼みで出て行くとはいいながら、契約は合意解約されたものと判断されます。この合意の中に原状回復免除などの取決めがないようですので、退去の問題と原状回復の費用請求とは別問題になります。 そこで、いわれている原状回復費用30万円の請求ですが、ご自分の故意・過失や正常でない使い方などによって、壊したり、傷つけたものがあればその部分についての修繕費用は借主の負担となります。原状回復のガイドライン等を基に、請求内容をよく精査してご自分が負担すべきものを区分し管理業者や貸主と交渉してみてください。