契約解除・更新拒絶などについて
- 大家です。来春、私の長男が結婚します。そこで現在賃貸している借家を明け渡してもらいたいのですが、入居しているのは先代からの借家人で、そこの息子と私は同級生で幼なじみでもあります。 このような事情もあり、なるべく円満に明け渡しをお願いしたいのですが、何かよい方法はないでしょうか?
法的な制度としては、このような問題を解決するために「調停制度」というものがあります。これは、普通の裁判のように対立する当事者の間で主張の正否を決めて解決するのではなく、お互いの意見を話し合いにより調整し、解決を図ろうとするものです。
具体的には知識や経験豊富な第三者、一般的には裁判官である調停主任と調停委員2名以上で構成された調停委員会で、当事者を斡旋して条理にかない実状に即した解決を図ろうとする制度です。 当事者だけの話し合いでは、どうしても感情的になって自分の意見を冷静に相手方に伝えることができなかったり、相手方が冷静に聞いてくれなかったりして紛糾することがありますが、そのようなときは、調停委員会が間を取り持ち問題を整理して話を進めてくれます。
また、訴訟では申し立てた側の意見が正しいかどうかの判断だけですが、調停は相互の意見を出し合いある点では譲歩し、またある点では譲歩を求めるなどして解決内容を自由に決めることができます。 調停の申し立ては相手方の住所地を管轄する簡易裁判所となっておりますので、詳しくはそちらでお尋ね下さい。- 借家人が家主である私に無断で借家の「和室」を「洋室」に改造してしまったのです。 洋室にするとフローリングによる階下への騒音問題も気になりますし、家主である私に一言の断りもなく、このような改造工事を勝手に行った借家人に対しての怒りがおさまりません。 このうえは、信頼関係の破壊ということで賃貸借契約を解約したいのですが、賃貸借契約書の中に今回のような「無断改造」の禁止規定を入れてなかったのです。 契約条項にないので解約は難しいでしょうか?
一般的に賃貸借契約を解約できる内容としては、次のようなことが考えられます。
1. 家賃の滞納、不払い
2. 賃借権の無断譲渡、転貸
3. 無断増改築
4. 使用目的の無断変更
5. 共同生活の保全に反する行為の繰り返し、などです。今回の場合は、3.の無断増改築にあたり、契約の解除はできることになります。ただ、契約書中にこの条文がないとのことですが、民法では賃貸借契約においてその使用目的を特約で特定した場合はもちろん、特約がなくても借家の構造、周囲の環境等から使用目的が定まる場合には、 そのことに従って借家を使用しなければならない「用法遵守義務」があるのと同時に、使用目的に照らして一般的に要求される注意を持って借家を保管しなければならない「善管保管義務」が借家人に対して課されており、このことに違反した場合は契約解除は可能と考えられます。
しかし、できるだけ先ほど列記したような契約解除条項は賃貸借契約書中に定めておいたほうが入居者にとってもわかりやすく、なんといってもトラブルの未然防止に繋がると考えて間違いないと思います- 賃借人が入居6か月後から何の連絡もなく長期不在となり家賃が不払となりました。部屋には古いたんすやダンボールなどが残されたままになっています。室内の整理や、次の賃借人の募集、不在者に対する契約解除等どのような点に注意して対処したらいいのでしょうか。
貸主や、管理業者が勝手に残置物を処分するなどの行為は、認められていません(自力救済行為の禁止)。まずは連帯保証人等に状況を説明し、滞納家賃の支払いや室内の整理を伝えるべきと思えます。そうでなければ面倒であっても法的手続により処理することになります。借主に対し契約の解除および明渡しとともに、滞納賃料支払の判決を求める訴えを提起し、その判決に基づいて、残置動産の差押競売をすることにより処分します。借主の所在がわからない場合は、公示送達の手続により行いますが、契約解除の意思表示を訴状に記載すると、裁判所の手で公示送達されたことになります(民事訴訟法113条)。
- 家賃の支払いが1ヵ月以上滞っている借家人がいます。 賃貸借契約書中には、借家人が1ヵ月以上賃料の支払いを怠ったときは、家主は何等の通知催促を要せず賃貸借契約を解除することができるとの条項があります。 この契約条項を楯に日頃も態度の悪いこの借家人との賃貸借契約を解約したいと思いますが、問題はないでしょうか?
借家人に今回のケースのように家賃不払いがある場合において、家主が賃貸借契約の解除を実行するには、
1. 借家人に軽微とはいえない家賃の不払いがあること。
2. 家主が相当の期間を定めて家賃の支払いを求める催告をしていること。
3. 借家人がその催告期間内に家賃の支払いをしていないこと。
4. 家主が契約解除の意思表示をすること、などの条件が必要です。1.の家賃不払いの程度としては、賃貸借契約の基礎をなす借家人と家主の信頼関係を破壊する程度と考えられ、判例等見てみますと最低3ヵ月は必要なようです。
2.の催告の期間としては1週間程度は必要だと思われます。以上のことから、残念ながらご質問の1ヵ月程度の家賃不払いでは、家賃支払い義務違反としては軽微であり、借家人と家主の信頼関係の破壊とまでは言い難く、契約解除は認められないでしょう。 また、契約書中の無催促解除条項についても、あまりに家主側にとって有利な特約と解され、悪くすれば公序良俗に反する契約内容ととられるかもしれません。 粘り強く督促されることをお勧めします。それでも借家人に反省がなければ、そのことが解約の理由となるでしょう。
- 不動産業者が貸主になっているアパートを借りています。契約書に手書きで「借主は2年間退去できない」とありますが、1年前の入居時には気づきませんでした。数ヶ月後に退去する可能性があります。残りの期間の家賃も払わなくてはならないのですか。
残りの期間の家賃(違約金)については、その金額が暴利行為といえる場合にはその全部又は一部が無効になると解されており、裁判例では賃料の1年分を超える部分の違約金を無効と判断したものがあります。
- 契約期間中なのですが、都合があって退去したいと考えています、契約書には「契約期間中の解約は、相当の期間をおいて申し出ること」とされています。退去の申し入れはどのくらい前にしなければいけないのでしょうか。
旧建設省が作成した賃貸住宅標準契約書では、解約予告期間について、「少なくとも30日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解除することができる」旨の定めがありますが、一般には解約申入れの期間を1か月程度としていること、賃料については申入れからの期間に合わせた日割り計算にしていることが多いようです。 標準契約書に倣って、大家さんと話してみてはいかがでしょうか。
- もうじきアパートの契約期限が切れます。私は更新して住み続けたいのですが、大家さんからは立ち退くように言われています。大家さんには別に家があります。これまで7年の間、家賃の支払いが3回くらい遅れたことはありますが、今は特に滞納はありません。引き続き住むことはできますか。
借地借家法によれば、通常の借家契約では、大家さんが更新を拒絶しようとする場合は、正当事由が必要とされ、「賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情」、「賃貸借に関する従前の経過」、「建物の利用状況」など具体的な判断基準が明示されています。詳しい事情はわかりませんが、大家さんには別に家があり、自ら入居しようということではなさそうですので、ひどく老朽化したので建て替えざるを得ないなど、ほかに特段の事情がなければ、正当事由はないと思われます。 また、過去7年間に3回程度の家賃の滞納があっても、現在滞納がなければ、契約の解除事由には当たりませんので、今後もアパートに住み続けることは可能と思われます。