原状回復について
- 大家さんから敷金の精算書が届いたのですが、原状回復費用その他で30数万円の請求を受けました。 部屋を汚したこともなく、あまりに高額なためびっくりするのと同時に憤りを覚えました。支払わなければならないのでしょうか?
借主が借りていた住宅を退去するときは、住宅を元の状態に戻して大家さんに返す必要があります。 このことを原状回復義務といいますが、ここでいう原状回復とは住宅を完全に入居時の状態に戻すということではなく、故意または過失で部屋を汚したり壊したりしたほか、家主に無断で原状を変更したときに負う責任をいいます。
ですから、基本的には通常の使用によるふすま、障子、畳、壁紙などの自然損耗については入居当時の状態より悪くなったとしても、そのまま家主に返せば足りると考えられます。自然に損耗した部分の原状回復費用は家賃の中に含まれていると考えられるからです。
しかし、契約書中に取り決めがなされている場合で軽微なものについては、慣習上の問題もあり一部借主に負担してもらうとの考えもあります。
ご質問の方のように、普通の状態で使用しており、故意過失関係なく部屋を汚したり壊したりしていないと思われるのであれば、大家さんに費用の見積書を請求して賃貸借契約の内容と照らし合わせ、支払う義務があるかどうか確認し、納得がいくまで大家さんと話し合いをされたらいかがでしょうか。今後の問題ですが、 契約時に大家さんに退去するときの原状回復の範囲と負担の方法について確認する。 入居時に家主の立ち会いのうえ住宅の状況を確認する。 退去するときも修繕箇所を家主とともに確認し、過失による損耗と自然損耗の区別をはっきりさせる。 以上のようなことに注意しましょう。
- 東京23区内のアパートを最近出て、今は他県に住んでいます。敷金は28万円でした。特に汚していないのに、敷金返還額は5万円と原状回復のガイドラインとはかけ離れた内容でした。弁護士に頼らなくても、少額訴訟は可能と聞きましたが、具体的にどこへどう起こせばいいのでしょうか。
少額訴訟は、原則として、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に起こすことになります(敷金返還請求のように、不動産に関する請求の場合にはその不動産の所在地を管轄する簡易裁判所にも訴えることができます)。ご質問のケースでは、「東京簡易裁判所」でよいと思われますが、詳しくは最寄りの簡易裁判所にご確認ください。また、訴訟を起こすには、訴状や申立手数料、郵便切手などが必要ですが、訴状の書式やその記入例などは裁判所のホームページでも入手できますので参考にしてみてはいかがでしょうか。
- 私は賃料5万円、敷金5万円、礼金5万円で、アパートを借りていましたが、ミュージシャンなので、音がうるさいと周りからよく苦情をいわれました。媒介(仲介)業者を通じて、大家さんから、20万円の立ち退き料を支払うから出て行ってくれといわれたので、出て行くことにしました。管理業者は、媒介業者の子会社ですが、退去時に検査して、原状回復費用に30万円かかるといわれました。確かに床や壁など、音楽の練習をしている際に、少し壊したところがあります。でも、大家さんの頼みで出て行くのだから、原状回復費用は大家さん持ちだと思うのですが、どうでしょうか?
大家さんの頼みで出て行くとはいいながら、契約は合意解約されたものと判断されます。この合意の中に原状回復免除などの取決めがないようですので、退去の問題と原状回復の費用請求とは別問題になります。 そこで、いわれている原状回復費用30万円の請求ですが、ご自分の故意・過失や正常でない使い方などによって、壊したり、傷つけたものがあればその部分についての修繕費用は借主の負担となります。原状回復のガイドライン等を基に、請求内容をよく精査してご自分が負担すべきものを区分し管理業者や貸主と交渉してみてください。
- 今度アパートに入居しますが、契約の前に、不動産屋さんから、原状回復の特約を見せられました。それは大変細かくて、通常の使用による損耗と思われるものなどまで借主負担となっています。物件は気に入っていますが、この特約は「原状回復のガイドライン」とはだいぶ違う気がします。はずしてもらうにはどうしたらよいでしょうか。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、経年変化や通常損耗まで賃借人に負担させる特約については、一定の要件を満たしていなければその効力が争われることに十分留意すべきであるとしています。そのようなことも基に不動産屋さんと交渉し、特約をはずしてもらえないようであれば、トラブル回避のためには契約しないのも方法の1つです。
- アパートを退去するにあたって、宅建業者から「畳の交換とハウスクリーニングは借主の負担です。契約書にも書いてあります。」と言われました。契約書をよく読んでいなかったのですが、判を押した以上、こちらの負担になるのでしょうか?
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、賃貸借契約については、強行法規に反しないものであれば、特約を設けることは契約自由の原則から認められるが、経年変化や通常損耗に対する修繕義務等を賃借人に負担させる特約は、賃借人に法律上、社会通念上の義務とは別個の新たな義務を課すことになるため、
1,特約の必要性があり、かつ、暴利でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
2.賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
3.賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていることという要件を満たしていない
であれば、その効力を争われることに十分留意すべきであることを示しています。特約の内容をよく見直した上で、宅建業者や大家さんと交渉してみましょう。